学資保険だけで準備をすると、子どもが大学へ行けなくなるかもしれない

最近では、高校進学率が95パーセントを超えただけでなく、大学進学率が50パーセントを超えています。つまり、半分以上の子どもが大学へ進学する時代となりました。大学の学費というのは「国立大学」では500万円かかり、「私立大学」では600~700万円くらいかかるそうです。この金額は「学費」に限った話で、実際には、生活費がプラスされるわけですが、指し当たっては「受験から入学手続きまでに必要な金額を確保しよう」と考えて、たくさんの親御さんが郵便局へ相談を持ちかけます。そして「子どもの学費を準備するなら、郵便局の学資保険がおすすめです」と言われ、それを実践している人も多いのではないでしょうか?

「学資保険」の仕組みは、①毎月の保険料を積み立てていくと、子どもの学費が必要な年齢(15歳、18歳など)になったら満期金を受け取れる、②契約期間中に両親が亡くなった場合には、そこからの保険料は免除され、満期金と同額の死亡保険金を受け取れる、といったものです。Aさんのお宅の長男は幼稚園に入学したばかりです。あるときAさんがたまたま郵便局へ立ち寄った際に「学資保険」のパンフレットを眺める機会がありました。すると、そこには大学や専門学校の受験料から入学までの費用は、234万円かかると書かれているのです。

また、半数の親は子どもの誕生時から、この234万円の準備をはじめている、とも書いてありました。これを見たAさんは血の気が引いてしまいました。「えっ、ウチの子どもは、もう幼稚園に通っているわ。今すぐ学資保険をはじめないと、間に合わないじゃないの!」と、慌てて契約をしてしまったのです。しかし、Aさんは、よく内容を確認しておくべきでした。というのも、子どもが3歳のときから18歳になるまで、毎月1万6,830円の保険料を払い続ければ、15年分では保険料は302万9,400円も支払うことになるものの、大学入学時に確実に受け取れるのは300万円の満期金でしかないからです。

もちろん、300万円の死亡保険金が「おまけ」についていたり、多少の運用益がついてくる可能性もありますが、基本的には、大学費用を準備するという目的からすれば、15年間もせっせと積み立ててきた挙句、15年分の利子がもらえるどころか、3万円近くも損をする計算になるわけです。Aさんの間違いはこれだけはありません。「大学」の費用というのは「学費」だけでも500万円以上かかりますから、300万円だけでは全然足りません。そこでAさんは、300万円までの「国の教育ローン」を今の利率でいえば年利2.65パーセントで借りることになるはずです。そして、15年払いで返済すれば、返済総額は363万8,900円になってしまいます。

つまり、子どもが大学を卒業してからも10年以上に渡って、毎月2万円を延々と返済し続ける事態が待ち受けるのです。そんなことも気づかずに「学資保険を申し込んだから、子どもが進学しても安心だ」なんてAさんは言っているわけですから「知らぬが仏」とはこのことですね。

大学費用の準備には投資の力を利用する

AIU保険の調査によると「子ども」の費用というのは、幼稚園から大学までを公立校で通しても3,000万円程度かかりますし、私立校で通すと4,000万円近くかかります。つまり、子ども2人を大学まで進学させると、2人で8,000万円程度を覚悟する必要があるわけです。この中でも、「大学」の費用というのは、1番安い国立大学の学費だけでも500万円程度になり、私立の理科系では700万円を超えてきます。ここに生活費がプラスされるのですから「大学」の費用は、最低限1,000万円はかかるとみたほうが無難です。最低限1,000万円とは、かなり大きな支出ですが、そもそも「大学」の費用というのは、超高級品なのです。

1975年から2005年までに、モノの値段は1.8倍しか上かっていないのに、国立大学の授業料は14.9倍にも値上がりしている有様です。これだけの超高級品を半数の子どもに与える時代がやってきた、と言っていいでしょう。たしかに、大卒の男性の生涯賃金は2億7,100万円なのに、高卒の男性では2億600万円なので、大学の学位にはそれなりの金銭的価値があるわけです。半数の子どもを進学させるのもうなずけます。

ただし、Aさんのように、昔ながらのやり方で「学資保険」を使い、大学の費用を準備していけば、積み立ててきた保険料は利子もついていない状態であり、満期金を手にした時点では大学の費用が全然足りなくなる可能性が高いわけです。そのため、仕方なく「教育ローン」を借りる人がいますが、15年払いにしても「学資保険」の15年間と通算して、結局、30年間、毎月2万円近くを支払い続ける計算です。Aさんの陥った落とし穴とは、こんな流れに乗ってしまった点にあるわけですが、大学の授業料というものが、「物価上昇率」を遥かに上回るペースで上昇する可能性がある以上、これからの時代には、大学の学費は投資で準備するべきです。

仮に、毎月2万円を投資に回すとすれば、15年間では、投資金額は360万円ですが、年率3パーセントの投資では453万6,000円になり、年率5パーセントの投資では、531万8,000円になり、年率7パーセントの投資では625万7,000円になります。過去40年間の主要4資産の年平均上昇率からすれば、年率3~7パーセント程度なら、十分に実現することは可能です。一生懸命に受験科目を勉強して大学へ入学した挙句、そこから15年間も子どもが借金漬けになるよりも、ほんの少しだけ「お金の問題」を勉強して、親が大学準備をしたほうが「教育効果」だって大きいのではないでしょうか?

大学に関しては投資効率を考える

大卒者と高卒者との間には、月収では、男性10万2,600円、女性7万2,900円の格差があり、生涯賃金では、男性6,500万円、女性8,200万円の格差があることが分かります。大学の学位は、収入に結びつくことは確かです。ただし、国立大学授業料の伸びのデータを見れば分かるように、1975~2005年で比べれば、消費者物価の1.8倍に対して、大学費用は14.9倍に跳ね上がっています。「大学」や「学部」を選ぶ際には、コストに見合うだけの収入が得られるか「投資効率」を考える時代です。

— posted by 斗間下 at 05:21 pm